第二十四話 … 足利の誇るべきもの
父・英樹の生まれ故郷、栃木県足利市の誇るべきものは?…そう部外の者に尋ねたら、十人のうち九人は、足利学校と答えるに違いありません。ということで、今回は過般六月十五日に東京の郊外・武蔵境にある亜細亜大学のある教室で行われた、部外講師による特別授業として、学生・大学院生・留学生など、数十人を集めた講義についての報告させていただきます。 講演名は『日本最古の学校・足利学校』についてです。講師は足利市役所のOBで、足利の人と歴史に詳しい長太三氏です。ことの発端は、私が酒飲み仲間の大学時代からの友人達に、「足利はいい街だから、一度は見ておけ」と、酒の席でせっついたことです。 結果、その中の二人が、一泊で足利を回ってみようということになり、三月初旬に巌華園にお世話になることになりました。その酒宴のさなか、私の友人で同行していた同大学で経済学の教授をしている名取が、面識のあった長さんは元気かなということになり、長さんにも顔を出していただくことにもなったのです。 学者の名取は、神田の古本屋を歩き回るのも、大切な仕事のひとつです。不精な私は、彼に「杉山英樹」の名がある本は買っておいてくれと、金も渡さずに頼んでいたのです。そんなあるとき、杉山智恵子を通して交誼の始まった長さんのお宅で、足利学校の足利文庫に、『バルザックの世界』がおかれてないと聞いた私は、即刻名取に電話を入れました。「俺のには為書きが入っているので、代わりにお前の持っているやつを、図書館に寄贈してくれ」「わかった」ということで、数冊の英樹に関しても本が、長さんの手を通して、当時の足利学校の橋本所長にお渡しをした経緯があったのです。 そんなこんな、酒も大分入ってはいましたが、真顔になった名取が長さんに、「足利についてのことを、ぜひゼミの講義として学生達に話して欲しいと」懇願し、それが実現の運びに至ったのです。 講義には学部長をされている植村教授をはじめ、多くの関係者も訪れてくれました。長さんは、用意してきた足利のポスターを貼り、足利の観光案内のパンフレットなどもレジメの中に加え、九十分間の講義の最初は、足利の現況と盤阿寺をはじめとする観光資源を紹介したあとに、本題の足利学校の設立当初からの歴史から講義を始めていきました。私もどきが足利学校について語るには、足利に住まわれる方には釈迦に説法ということで、割愛させていただきますが、殆んどの生徒は、名前は知っていても、一度も訊ねたことのない足利の地に、大変に興味を引かれたことは、足利の街にとっても意義のあったことと、部外者の私も胸をなでおろしております。 ( 写真 長氏の講義風景)
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